同じようにぶつけても、感じる痛みが毎回まったく同じとは限りません。痛みは大切な体のサインですが、その強さだけで、傷の大きさをそのまま測れるわけでもありません。
生理学入門の第10回は、痛みを理解する最初の一歩です。
体を傷つける可能性のある刺激を、神経がとらえる
強い熱や圧力など、組織を傷つける、または傷つける可能性のある刺激に関する神経の処理を「侵害受容」と呼びます。[1]
難しい言葉ですが、まずは「有害な刺激についての情報を、神経が扱う働き」と考えてみてください。
侵害受容と痛みは、同じものではない
痛みは、本人が経験する感覚と感情を伴う体験です。国際疼痛学会(IASP)は、痛みと侵害受容を区別し、神経の活動だけから痛みを推定することはできないとしています。[1]
刺激の情報が、単純に音量計のように痛みへ置き換わるわけではありません。「神経の情報」と「本人が経験する痛み」を分けることが、理解の出発点です。
心理・社会的な影響があることは、気のせいという意味ではない
痛みには、体の状態だけでなく、心理的・社会的な要因もさまざまな程度で影響します。[1] だからといって、本人の訴えを軽く扱ったり、性格や気持ちの問題にしたりしてよいわけではありません。
画像で説明できる所見が乏しいことも、「痛くないはず」という根拠にはなりません。一方で、痛みの仕組みを学んだことを理由に、けがや病気の確認を省くのも適切ではありません。
痛みの強さ以外も伝えてみる
相談するときは、どこが、いつから、どんな場面で痛むかに加え、できなくなった動作や経過も伝えると、状況を共有しやすくなります。これは診断を自分でつけるためではなく、困りごとを整理する方法です。
「痛いから必ず壊れている」「画像に問題がないから無視してよい」のどちらにも寄りすぎないことが大切です。
今日のポイント
痛みは、本人にとって現実の体験です。刺激の情報と痛みを区別し、体の状態と生活への影響を合わせて捉えていきましょう。新たな強い痛みや悪化する症状は、この記事だけで判断せず医療機関へ相談してください。
参考資料
1. International Association for the Study of Pain. Terminology: Pain and Nociception. https://www.iasp-pain.org/resources/terminology/
2. European Pain Federation. Types of pain. https://europeanpainfederation.eu/types-of-pain/
確認日:2026年10月29日。痛みの原因を診断したり、治療を決めたりする記事ではありません。
生理学入門シリーズ
- 第1回:筋肉が力を出す仕組み
- 第2回:筋力と筋持久力の違いとは?「強い」と「長く続けられる」を分けて考える
- 第3回:速筋と遅筋の違いとは?筋肉を「瞬発力型・持久力型」だけで決めつけない
- 第4回:筋肉を動かすエネルギーとは?ATPと3つの供給経路をやさしく解説
- 第5回:運動すると呼吸が速くなるのはなぜ?酸素と二酸化炭素の出入りを知ろう
- 第6回:運動すると心拍数が上がるのはなぜ?心臓と血液の働きをやさしく解説
- 第7回:筋トレで筋力が上がるのはなぜ?筋肉の大きさと神経の働き
- 第8回:伸張反射とは?ストレッチと筋肉のセンサーの関係をやさしく解説
- 第9回:バランスは筋力だけで決まる?目・耳・体の感覚が協力する仕組み
- 第10回:痛みはどうして起こる?「刺激の情報」と「痛みの体験」を分けて考える

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