短距離走では速筋、長距離走では遅筋。そんな説明を聞いたことがあるかもしれません。入り口としては分かりやすいのですが、実際の筋肉はどちらか一方だけで働くわけではありません。
今回は、筋線維の種類を大まかに整理します。
筋肉の中には、性質の違う筋線維がある
骨格筋を構成する筋線維は、収縮する速さや疲れにくさ、エネルギーをつくる性質などで分類されます。人の骨格筋では、主にタイプI・IIa・IIxという名前が使われます。[1]
| 種類 | 大まかな特徴 |
|---|---|
| タイプI(遅筋) | 収縮は比較的ゆっくりで、疲れにくい |
| タイプIIa(速筋) | 速く収縮し、酸化系と解糖系の両方を利用する性質がある |
| タイプIIx(速筋) | 速い収縮が特徴で、高い強度の活動に関わり、疲れやすい |
分類は理解のための整理です。中間的な性質を持つ筋線維もあり、きれいに3つの箱へ分かれるだけではありません。[1,2]
歩くときに速筋は使わない?
「歩くから遅筋だけ」「走るから速筋だけ」という分け方はできません。必要な力や疲労の状態などによって、活動する運動単位が変わります。筋肉にはさまざまな性質の線維があり、活動の要求に応じて働いています。[1]
坂道、速度、荷物の有無で歩行の負担が変わることを思い浮かべると、動作名だけでは説明できないことが分かります。
見た目から割合は分からない
脚が太い、走るのが速い、長く歩ける。それだけで筋線維の割合を判定することはできません。動作の成績には、技術や神経の働き、心肺機能なども関わります。
トレーニングへの適応はありますが、「この運動をすれば遅筋が全部速筋になる」といった単純な説明も避けたいところです。[1]
今日のポイント
速筋と遅筋は、筋線維の性質を理解するための言葉です。得意不得意を固定するラベルとしてではなく、「いろいろな性質の筋線維が協力している」と捉えてみましょう。
参考資料
1. Patel PN, et al. Exercise Physiology. StatPearls. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/books/NBK482280/
2. University of California San Diego. Muscle Physiology: Fiber Types. https://muscle.ucsd.edu/refs/musintro/fiber.shtml
確認日:2026年10月29日。基礎知識の学習を目的とした記事です。
生理学入門シリーズ
- 第1回:筋肉が力を出す仕組み
- 第2回:筋力と筋持久力の違いとは?「強い」と「長く続けられる」を分けて考える
- 第3回:速筋と遅筋の違いとは?筋肉を「瞬発力型・持久力型」だけで決めつけない
- 第4回:筋肉を動かすエネルギーとは?ATPと3つの供給経路をやさしく解説
- 第5回:運動すると呼吸が速くなるのはなぜ?酸素と二酸化炭素の出入りを知ろう
- 第6回:運動すると心拍数が上がるのはなぜ?心臓と血液の働きをやさしく解説
- 第7回:筋トレで筋力が上がるのはなぜ?筋肉の大きさと神経の働き
- 第8回:伸張反射とは?ストレッチと筋肉のセンサーの関係をやさしく解説
- 第9回:バランスは筋力だけで決まる?目・耳・体の感覚が協力する仕組み
- 第10回:痛みはどうして起こる?「刺激の情報」と「痛みの体験」を分けて考える

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