しゃがむと踵が浮く。階段を下りるとき、足首の前が詰まる感じがする。そんなとき「ふくらはぎを伸ばせばいいのかな」と考える方は多いと思います。
ただ、足首の硬さは、筋肉の伸びにくさだけで説明できるとは限りません。足部の動き、痛み、捻挫後の状態なども確認する必要があります。今回は、足首の「背屈」をテーマに、確認するときのポイントを整理します。
背屈とは、足の甲とすねが近づく動き
椅子に座ってつま先を持ち上げる動きが背屈です。立っているときは、踵を床につけたまま、すねが足の上を前に進む動きにも関係します。歩く、階段を下りる、しゃがむなど、日常の多くの場面で使います。
教科書では、体重をかけた背屈を足首の一つの関節だけで捉えず、踵や足の中央部などの動きも含めて考えています。[1]「つま先が上がる」だけでなく、「足を床につけた状態でどう動けるか」を見ることが大切です。
「しゃがめない=足首が原因」とは決められない
しゃがむ動作には股関節・膝・体幹、体格や足幅も関わります。踵が浮くという一つの見た目だけで、背屈制限や病気を診断することはできません。
| 気になること | 一緒に確認したいこと |
|---|---|
| 踵が浮く | 足幅、しゃがむ深さ、左右差 |
| ふくらはぎが張る | 膝を伸ばしたときと曲げたときの違い |
| 足首の前が痛い | 痛む場所、腫れ、過去のけが |
| 捻挫後から動きにくい | 痛み・腫れ・不安定感の経過 |
この表は相談内容を整理するためのものです。感じ方から原因の組織を特定する表ではありません。
壁を使う確認は「同じ条件で比べる」ために
体重をかけた背屈の評価には、weight-bearing lunge test(荷重位ランジテスト)が使われます。研究では測定の信頼性が検討されていますが、測り方をそろえることが前提です。[2]家庭では診断や競技復帰判定に使わず、担当者と経過を共有する材料にしましょう。
- 転倒しないよう壁に手をつき、安定した床で片足を前に置きます。
- 踵を床につけたまま、膝をゆっくり壁へ近づけます。
- 痛みを押して進まず、足先の向きと踵の浮きを確認します。
- 比べる場合は、履物、足の向き、測定方法をそろえます。
距離を伸ばす競争にする必要はありません。「何cmなら合格」と一律に決めず、左右差だけでなく、痛みや生活で困っていることも記録します。つま先を大きく外へ向けたり踵を浮かせたりすると、別の動きが混ざって比較しにくくなります。
運動は、痛みのない範囲から
座って足首を動かす
まずは椅子で足首をゆっくり上下させます。強く引っ張らず、どの範囲なら楽に動くかを確かめます。骨折・手術後などで運動制限がある場合は、担当者の指示を優先してください。
支えを使い、すねを少し前へ動かす
体重をかけてよい状態なら、壁などに手をつき、踵を床につけて小さく前後に動きます。前側の鋭い痛みや詰まりを押し切らないこと。膝と足先が大きくねじれない、無理のない範囲を探します。
ふくらはぎのストレッチが合うか確認する
後ろ側に穏やかな伸びを感じる範囲で検討します。教科書では膝の角度も評価に関わるとされており、膝を伸ばした姿勢と曲げた姿勢の違いも相談の材料になります。[1]ただし「曲げると動くから、この筋肉が原因」と自己判断はしません。
回数や時間は一律のノルマにせず、少量から。その場で動きやすくなっても、夕方や翌朝に痛み・腫れが増えていないかを確認し、増えていれば量や方法を戻して相談します。
前側が痛いときは、強く押し込まない
前側の痛みを「硬いから伸ばす必要がある」と考えて無理に続けないでください。捻挫後の痛みや腫れが続く、引っかかる感じがある、歩くと症状が増える場合は評価を受けましょう。
けがの直後に体重をかけられない、大きな腫れや変形、しびれがある場合は、セルフチェックより受診を優先します。
医療職・学生が確認したい視点
非荷重位と荷重位、膝の角度、足部の代償、痛みの出方を区別して記録します。可動域が変わったときも、歩行や段差など本人の目標動作にどうつながったかを確認したいところです。捻挫のガイドラインでも、背屈はバランスや荷重時痛などと併せて扱う評価項目です。[3]
相談するときのメモ
「右の足首。階段を下りると前側が痛い。朝より夕方につらい。1か月前にひねった」のように、場所・動作・時間帯・きっかけをまとめると伝わりやすくなります。これは説明用の例で、実際の症例ではありません。
あわせて読む
参考資料
- 小林匠「足関節背屈可動性障害」pp.36、42–43。片寄正樹 監修、小林匠・三木貴弘 編集『足部・足関節理学療法マネジメント』メジカルビュー社、2018年。
- Powden CJ, et al. Reliability and minimal detectable change of the weight-bearing lunge test: A systematic review. 2015.
- Martin RL, et al. Lateral Ankle Ligament Sprains: Clinical Practice Guidelines. 2021.
- NHS:Ankle pain(受診目安の参考)。
資料確認日:2026年10月22日。一般的な学習・情報提供を目的とした記事です。表や説明はPT NOTEが独自に構成し、教科書の図・写真・本文は転載していません。個別の診断や運動処方は担当の医療職に相談してください。

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