褥瘡予防のポジショニング実践編|動画で学ぶクッション調整と確認ポイント

ポジショニングの見直し方。目的、支持、確認の3つの視点で、クッションを入れたあとを見直す 病院

「動画と同じようにクッションを置いたのに、しばらくすると姿勢が崩れる」。そんなときは、クッションをもう一つ足す前に、どこで体重を支えているか、どこが当たっているかを見直してみましょう。

この記事は、褥瘡予防のポジショニングの基本記事に続く実践編です。公開動画とメーカー資料を手がかりに、ベッド上での調整を考えるための観察ポイントをまとめます。姿勢の定義や体位変換間隔は、基本記事をご覧ください。

対象は主に成人のベッド上ケアです。すでに褥瘡がある方、術後の姿勢制限、強い痛み、呼吸・循環の問題がある方は、動画を見ながら自己判断で変更せず、担当の医療職と方法を決めてください。

参考動画は「どこを見るか」を決めてから

動画は介助する手の動きや用具の扱いを知る入り口になります。ただし、画面越しには皮膚にかかる力や本人の痛みまで判断できません。ここでは、公開元が分かる2つのYouTube動画を紹介します。動画の書き起こしではなく、公開されている説明と資料を照合して、実施後に観察したい点を整理しています。

公開元・動画 見るときの着眼点 そのまま一般化しない点
福祉用具屋さんチャンネル「【プロが教える】体圧分散ポジショニングの完全極意!」 概要欄の05:17「方法」、11:33「注意点」を入り口に、支える場所と実施後の確認を見る。 概要欄にPR表記があり、タイカ製品を紹介する動画です。製品紹介と、褥瘡予防の効果を比較した研究は区別します。
ラックヘルスケア「30度側臥位をしっかりホールドするRM2-Hのご紹介」 背中を支える本体だけでなく、フラップを使って支えのずれに配慮する製品構造を見る。 フラップのある専用品の使い方です。普通の枕で同じ操作・保持力が得られるとは限りません。

どちらも「この製品なら誰にでも適合する」という根拠にはしません。製品名より、支えが働く仕組みと、本人の状態に合っているかを考える教材として活用します。動画・メーカーの写真や図の転載はしていません。

まずそろえるのは、クッションの数より「ケアの目的」

最初に「仙骨の圧を減らしたい」「膝同士の接触を避けたい」「横向きで楽に休めるようにしたい」など、今回確かめたいことを一つ明確にします。目的が曖昧だと、見た目は整っていても、肝心な場所の負担が残ることがあります。

タイカの公開解説では、身体の各部の重さをどこで受けるか、クッションの深さ・高さをどう合わせるかが取り上げられています。「隙間に物を入れた」と「身体を支えられた」は同じではないという視点で見ると、確認する場所が具体的になります。[タイカ:ポジショニングについて]

場面1:横向きにしたのに、仰向けへ戻ってしまう

先に見るところ:背中の支持が一部分に偏っていないか、クッションが移動・圧縮していないか、上側の脚の重さで骨盤が引っ張られていないかを確認します。

ラックヘルスケアのRM2-Hの説明では、フラップに体重を乗せて、支えのずれに配慮する仕組みが示されています。ここから考えたいのは「背中に置く場所」だけでなく、支えそのものが安定しているかです。使っている製品の取扱説明に沿い、支持する範囲・用具の適合・脚の位置を見直します。[RM2-Hの公式解説・動画]

30度という角度だけで完成にしないことも大切です。国際ガイドラインのR10は30度側臥位を条件付きで提案していますが、仙骨と大転子の除圧を確認し、体格に応じて角度や支持具を調整する前提です。[国際ガイドライン:Repositioning]

調整後:本人の楽さを確認し、少し時間が経ったときにも姿勢と支持が保たれているかを再確認します。クッションを高くすることだけで解決しようとすると、別の場所の圧迫を見逃しやすくなります。

場面2:膝の間に入れたのに、脚が落ち着かない

先に見るところ:膝だけでクッションを挟んでいないか、太ももから下腿の重さを支えられているか、膝やくるぶし同士が接触していないかを見ます。

上側の脚を支えるときは、脚の一部だけを持ち上げて、股関節や骨盤にねじれを作っていないかにも注目します。タイカの資料は、大腿部の支持とクッションの深さ・高さを扱っています。配置を考える際の参考にしつつ、関節の動く範囲を超えて、脚を開いたり伸ばしたりしないようにします。拘縮のある方は、支え方を個別に相談してください。[タイカ:下肢のポジショニング]

調整後:足先まで確認します。膝が離れたから十分とはせず、新しくくるぶしや足の外側が強く当たっていないかを見直しましょう。

場面3:踵を浮かせたつもりが、また寝具についている

踵の対策では、脚の下に枕があることと、踵が除圧されていることを分けて確認します。国際ガイドラインは、下腿・ふくらはぎを支えて踵を寝具から離し、枕の位置と高さを繰り返し確認する考え方を示しています。[国際ガイドライン:Heels]

  • 枕がつぶれたり、ずれたりして踵が接触していないか。
  • ふくらはぎを広く支え、膝裏やアキレス腱に支えの縁が集中していないか。
  • 寝返りやケアのあとにも、除圧が保たれているか。

RM2-Hのページには膝裏を支える使い方もありますが、それをそのまま踵除圧の完成形と扱わないことが重要です。姿勢保持と踵除圧は、確認する結果が違います。踵用の専用具も説明書に沿って使用し、別の場所の圧迫や歩行時の転倒リスクを確認します。

場面4:背上げのあと、お尻が前へ滑る・背中がつっぱる

先に見るところ:ベッドが折れ曲がる位置と本人の寝位置、骨盤の滑り、衣類やシーツの引っ張りを確認します。ディアケアの公開解説は、背上げ前の寝位置の確認と、背抜き・圧抜きを扱っています。[ディアケア:ポジショニングと体位変換]

ただし、「圧抜き」は赤い皮膚をこすったり、強くマッサージしたりすることではありません。皮膚を引きずらず、介助用具を含む安全な方法を実地で学びます。一人で無理に抱き起こさず、必要な人数や用具は施設の手順・本人の状態に合わせてください。

食事や呼吸のために背上げが必要な場合、褥瘡対策だけを理由に角度を下げないようにします。姿勢の目的を担当者間で共有したうえで、滑りや圧迫を減らす方法を考えます。

実施後の観察を、次の担当者へつなぐ

以下は本記事で整理した振り返り用の表です。ガイドラインが定めた点数表ではなく、褥瘡リスク評価や個別のケア計画に置き換わるものではありません。

確認すること 見る・聞く内容
目的 どこの負担を減らしたかったか。
支持 身体の重さをどこで受け、クッションがずれたりつぶれたりしていないか。
接触 避けたい場所に接触が残っていないか。別の場所に新たな圧迫がないか。
本人の反応 痛み、呼吸のしづらさ、不安、表情や体のこわばりに変化がないか。
経過 皮膚の変化、姿勢の崩れ、次回までに必要な見直しは何か。

共有メモは「クッション使用」だけでなく、「目的・配置・確認した結果・次に見る点」で残すと、方法を引き継ぎやすくなります。例えば、『目的:仙骨部の負担軽減。右へ傾けて背部と上側下肢を支持。実施後の本人の訴え、皮膚・接触の状態を記録し、次のケア時に支持のずれを再確認』といった書き方です。これは説明用の架空例で、実際の患者記録ではありません。

赤みが続く、紫色の変化、水疱、局所の熱感・腫れ、痛みの増加がある場合は、姿勢を整えたから大丈夫と判断せず、担当の看護師・医師へ相談してください。

基本の考え方と合わせて読む

実践では「クッションの配置をまねる→終了」ではなく、目的を決める→支えを調整する→本人と接触部位を確認する→時間を置いて見直すという流れを大切にします。

体位変換間隔や30度側臥位・踵除圧の基本は、褥瘡予防のポジショニング|30度側臥位・踵の除圧とクッションの使い方へ戻って確認できます。

出典・確認範囲

確認日:2026年10月19日。動画は公開元・概要欄・実演の一部を確認し、公式の解説ページと照合しました。動画全編の逐語的な検証や、使用製品の比較試験を行った記事ではありません。動画の説明、メーカーが示す使い方、ガイドラインの推奨、本記事の整理を区別しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました