褥瘡予防のポジショニング|30度側臥位・踵の除圧とクッションの使い方

褥瘡予防のポジショニング:30度側臥位、踵の除圧、背上げ時のずれ対策の確認ポイント 病院

「クッションを入れたのに、お尻が赤くなってしまった」「横向きにすると、今度は腰の横が痛そう」。ポジショニングでは、姿勢の形だけで判断すると、こうした問題を見逃してしまいます。

大切なのは、圧迫したくない場所の負担が減り、本人が楽に過ごせること。この記事では、成人のベッド上でのケアを中心に、国内・海外のガイドラインとメーカー・医療施設の公開資料から、実践のポイントを整理します。

すでに褥瘡がある方や、術後の姿勢制限、呼吸・循環の問題がある方は、担当医・看護師・リハビリ職と方法を決めてください。

30度側臥位で背中と脚を支える姿勢、踵の除圧、背上げ時の寝位置を示す模式図
ポジショニングの基本を示すオリジナル模式図(AI生成)。クリックすると拡大できます。クッションの位置や厚さは個別に調整し、仙骨・大転子・踵の負担と本人の安楽さを確認してください。

まず知っておきたい「除圧」と「体圧分散」

除圧は、負担を減らしたい場所から圧を取り除くこと。体圧分散は、体重を広い面で受けたり、荷重する場所を変えたりして、局所への集中を減らすことです。

日本褥瘡学会の一般向け資料でも、広い接触面積で姿勢を支える考え方が示されています。クッションの数を増やすことより、どこで体重を受け、どこの負担を減らしたいのかを先に考えましょう。日本褥瘡学会:褥瘡の予防について

体位変換は何時間ごと?国内外の推奨を整理

「全員2時間ごと」「エアマットなら4時間で大丈夫」とは言い切れません。推奨には対象と条件があります。

資料 間隔についての内容 読むときの注意
日本褥瘡学会『褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版』CQ12 高齢者の発生予防について、体圧分散マットレスを使用したうえで、4時間をこえない間隔を提案(2B) すべての患者に4時間間隔を認める意味ではありません。ここでは同版を引用する公開解説で推奨文を確認しています。
国際ガイドライン第4版・体位変換の章(2026年オンライン更新)R7・R8 適切な体圧分散寝具の使用下で、リスクのある多くの人に2時間または3時間間隔を提案。4〜6時間への一律の延長は提案していません いずれも条件付き推奨で、エビデンスの確実性は非常に低いとされています。

国内の記載は対象を高齢者に限定しています。数値だけを切り取らず、皮膚の反応、自力で動ける程度、全身状態、安楽さ、寝具を踏まえて計画します。国際ガイドラインでも個別化を重視し、体圧分散寝具だけで体位変換を完全に代替できないとしています。第5版CQ12を引用した公開解説、International Guideline:Repositioning and Mobilization

30度側臥位:角度よりも、仙骨と大転子の負担を見る

30度側臥位は、仰向けから体を少し横に傾ける姿勢です。仙骨はお尻の中央、大転子は太ももの付け根の外側にある骨の出っ張りを指します。

日本褥瘡学会は、お尻の広い筋肉の面で体重を受ける方法として紹介し、30度は個人差のある目安としています。国際ガイドラインも30度側臥位を条件付きで提案しますが、仙骨と大転子の除圧に合わせて角度を調整することが前提です。日本褥瘡学会の説明、国際ガイドライン R10

クッションを使う手順の例

モルテン「ミント」の取扱説明書では、肩から腰にかけた支持と、太ももからふくらはぎを支える方法が示されています。これを実施後の確認と組み合わせると、次のように整理できます。

  1. 本人に説明し、痛みや動かせる範囲を確認する。
  2. 体をゆっくり傾け、肩から腰をクッションで支える。 背中の一部分だけで支えていないかを見ます。
  3. 脚も支える。 上半身だけ横向きで、骨盤や脚が取り残されていないか確認します。
  4. 本人の反応と接触部位を確認する。 「この姿勢は楽ですか」「どこか当たりますか」と聞き、仙骨や腰の横に負担が残っていないか再評価します。

クッションを差し込んだ時点で完成とせず、姿勢全体を見直す流れにしましょう。モルテン「ミント」取扱説明書・使用例

踵は「やわらかい枕に載せる」だけで十分?

踵は、体圧分散マットレスを使用していても注意が必要な場所です。国際ガイドラインでは、リスクのある方の踵を寝具から離す方法を示しています。

枕を使う場合は、ふくらはぎを広く支え、踵が寝具にも枕にも接触していない状態を確認します。膝裏やアキレス腱の一部分に圧が集中しないよう調整してください。

  • 枕がつぶれて、踵が再び接触していないか。
  • 脚が動いたあとも、踵の除圧が保たれているか。
  • 装具やクッションが、くるぶしなど別の場所を圧迫していないか。

踵用の除圧具も、装着すれば終わりではありません。適合と皮膚を定期的に確認し、歩行時の転倒につながらないよう扱います。International Guideline:Preventing Heel Pressure Injuries

背上げでは、角度と「寝位置」を確認する

国際ガイドラインは、褥瘡予防の観点から背上げ30度以下を条件付きで提案しています。ただし、誤嚥予防などで高い角度が必要な場合があります。食事や呼吸に必要な姿勢を、褥瘡予防だけを理由に下げないことが大切です。国際ガイドライン R11

公開されている臥位の解説では、ベッドが折れ曲がる位置と、本人の臀部の位置を合わせることが取り上げられています。背上げ前に寝位置を確認し、膝側の支持などは使用するベッドの説明書に沿って調整します。ディアケア:褥瘡予防のためのポジショニング・臥位

背上げ後は、お尻が前へ滑っていないか、衣類やシーツが引っ張られていないかを確認します。パラマウントベッドが紹介する長岡中央綜合病院の事例では、大きく体を動かすことが負担になる方に、介助用グローブを使う取り組みが紹介されています。製品の使用方法を学び、本人の状態に合わせて実施するための参考になります。施設の活用事例であり、製品間の優劣を証明する資料ではありません。介助用グローブを用いた床ずれ対策

拘縮や円背があるときは、見本と同じ姿勢にこだわらない

関節が曲がったまま動かしにくい拘縮や、背中の丸まりが強い円背では、平らな寝具との間に隙間ができやすくなります。

モルテンの説明書には、下肢や背中を広い面積で支え、体の形に合わせて厚みを調整する例があります。また、国立病院機構・紫香楽病院も、変形や拘縮の強い方へのポジショニングピローの使用を紹介しています。ミント取扱説明書、紫香楽病院:当院における褥瘡対策

ただし、隙間を埋める作業だけでは、体のねじれや本人の苦痛を見落とすことがあります。臥位の解説でもアライメント、つまり体の各部位の位置関係を見る重要性が述べられています。クッションを足す前後で、姿勢全体と本人の反応を比べましょう。ディアケアの臥位解説

施設や在宅で共有したい確認・記録の例

以下は、紹介資料を踏まえて記事用に整理した確認項目です。特定のガイドラインが定めた評価尺度ではありません。

タイミング 確認・共有すること
実施前 圧迫を避けたい場所、皮膚の状態、痛み、姿勢制限、使用する寝具・用具
実施直後 本人の楽さ、支持する場所、除圧したい部位の接触、衣類やシーツの状態
次のケア時 姿勢の崩れ、クッションの移動、新しい皮膚変化、方法の修正が必要か

記録は「体位変換実施」だけでなく、「右へ傾け、背部と脚を支持。踵の接触なし。本人は痛みなし」のように、方法と結果を残すと次の担当者へ伝わりやすくなります。

赤みが消えない、色が紫っぽい、局所が熱い・腫れている、痛みが増えたといった変化があれば、同じ方法を繰り返さず評価を依頼してください。国際ガイドラインでも、初期の皮膚・組織変化が見られた場合は、損傷部の除圧と体位変換計画の見直しを求めています。国際ガイドライン R6

参考資料と確認範囲

資料確認日:2026年10月13日。

メーカー・施設の資料は、使い方や運用を考えるために参照しています。写真・図の転載は行っていません。

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