「痛みが減った」「大会が近い」。それだけでは、捻挫のあとに競技へ戻ってよいかは決められません。走れることと、試合中に急に止まる、着地する、方向を変えるといった動きができることは、別の話です。
ここでは、急性の足首の外側の捻挫で、復帰の判断を整理するPAASSを紹介します。PAASSは、復帰の許可が自動的に出る点数表ではありません。 医療者と選手が、確かめ忘れを減らすための枠組みです。

PAASSとは
2021年の国際的な専門家の合意では、復帰のときに考える項目が、5つの領域に整理されました。〔1〕
| 領域 | 確認する内容 |
|---|---|
| Pain:痛み | 競技中と直近24時間の痛み |
| Ankle impairments:足首の機能 | 可動域、筋力、持久力、パワー |
| Athlete perception:選手の感覚 | 安定感、自信、心理的な準備 |
| Sensorimotor control:感覚と運動の制御 | 位置感覚、動きの中でのバランス |
| Sport/functional performance:競技動作 | ホップ・着地・敏捷性、競技動作、通常練習の完遂 |
これは専門家の合意をまとめたものです。「左右差が何%なら必ず安全」といった、共通の合格ラインが決まったわけではありません。〔1〕
バスケットボールなら、何を相談する?
以下は、この枠組みを練習の場面に当てはめた相談の例です。PAASSが定めた公式のテストではありません。
- 痛み:練習中はどうか、翌朝は増えていないか
- 足首の機能:踵上げやしゃがみ動作で左右の違いがあるか
- 選手の感覚:着地を避ける、踏み切りをためらう場面があるか
- 運動制御:片脚で支えながらボールを扱えるか
- 競技動作:減速、横移動、ジャンプ、通常練習に対応できるか
「ジョギングは平気だけれど、横に切り返すのは怖い」という情報も大切です。不安を気合いの問題にせず、どんな場面で起こるのかを伝えましょう。
復帰を段階に分けて考える
リハビリでの運動、練習への一部参加、通常練習、試合では、それぞれ負荷が違います。一部参加の段階で、走る量や接触の有無、参加する時間をはっきりさせておくと、選手と指導者の認識をそろえやすくなります。
たとえば「シュート練習だけ参加」と決めても、リバウンドや対人練習が加われば、内容は変わってしまいます。参加できる種目と避ける場面を、言葉にしておくと実際に役立ちます。これは練習計画の工夫であり、医学的な許可の代わりにはなりません。
復帰前の相談メモ
| 質問 | 記入する内容 |
|---|---|
| どの動作がまだ難しい? | 着地、減速、接触など |
| どの程度練習できた? | 時間、内容、休憩 |
| 翌日の反応は? | 痛み、腫れ、歩行 |
| 本人はどう感じる? | 自信、不安、ぐらつき |
記録するのは、「合格」を出すためではありません。次に何を練習すればよいかを、具体的にするためです。本人の感覚と検査の結果が食い違うときも、どちらも相談の材料にします。
サポーターを着ければ復帰できる?
サポーターを使うことと、競技に必要な機能が戻ることは、分けて確かめます。着けた状態でも、痛みや動き、自信を見直してください。基本的な運動の段階は、捻挫のリハビリで解説しています。
復帰の日は、損傷の内容や競技で求められる動き、回復の状況によって変わります。カレンダーだけで決めず、確かめた結果をもとに、担当医、理学療法士、指導者と一緒に計画しましょう。
参考資料
- 1. Smith MD, et al. Return to sport decisions after an acute lateral ankle sprain injury: introducing the PAASS framework. Br J Sports Med. 2021;55:1270–1276.
資料確認日:2026年10月9日。記事内の記録表・相談例はPT NOTEによる整理です。運動の開始量や進め方は個別に調整してください。この記事は一般的な情報であり、個別の診断・治療を代替しません。


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